――ペンダントを渡そうとすると...
やはり、爺様はそれに触れることは叶わなかった――
するり、と草の上に落ちるペンダント。
>『・・・おお』
>『そうか、』
身を振るわせながら...地面に視線を落としながら...
>『もう、わしは・・・・・そうか』
しゃがみこみ、落ちたペンダントを両手ですくうようなそぶりを見せる爺様。
そして、私を、見上げる...
――ごめん、爺様...やっぱり気づいちゃったよね...
『ごめんね、爺様...ちゃんと探し物、探し出してあげられなくて...』
>『付き合わせて悪かったのう』
呪文を詠唱する爺様。
はっきりとは分からないけれど、落下制御の呪文、のようだ。
恐らくパムの身を案じてだろう。
そしてもう一度、呪文を唱える。
>「こどもたちや、じじいと遊んでくれてありがとうよ。
> わしはもう行かねばならんようじゃ。
> 今後もここで遊んでよいからの。
> 達者で、良い大人になるんじゃよ」
立ち上がり、子供達に向き直る爺様。
その言葉は下位古代語ではなく、共通語。
そうか、今のが...未知の言葉を話せる様になると言う魔法か。
爺様は、私達冒険者を改めて見回した。
>『ありがとうなあ、"冒険者"さん。
> そのペンダントは、付き合ってくれたお礼に差し上げよう。
> いくばくかにはなるじゃろう。
> ――ああ、ばあさん。
> 今帰るでなあ』
ノームが言っていた、人の抜け殻の埋まっているという岩のあたりに話しかけ...
爺様の姿はかき消えた。
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>「喜びの野ってとこに行っちまったのか、じいちゃん」
ホルンが、ぽつりとつぶやいた。
「あぁ、そうだねぇ...」
待っている人の所に、無事帰れたんだよ。
とは言っても...婆様も、爺様が心配で...こっちに来ちゃってたみたいだけどねぇ。
> ペンダントは、老人が消えるとほどなくして、もろもろと崩れて、ただの土の塊と化した。
> すうっと、ペンダントだったものから何かが抜けて、岩の中に消えて行ったような気がした。
ペンダントだったものを、その辺りの土と一緒にかき集め、岩の場所へと移す。
『爺様...婆様。
子供達は今後もここで遊ぶだろうから、寂しくはないよね?
二人で、見守っててあげておくれね』
そっと聖なる印を切り、その大きな岩に触れて祈りを捧げる。
「さて、と...ホルン、クララ、ピコ。
ここの岩の下に、爺様と婆様が眠ってる」
それだけは、教えておいてあげよう。
「二人はもう一緒には遊んであげられないとは思うけれど、
ここで楽しく子供達が楽しく遊んでるのを見れば、
爺様も婆様も、喜ぶと思うよぉ」
そういって、ピコの頭をそっと撫でる。
背負い袋から、マシュマロの袋とクッキーの袋を取り出して、渡す。
「皆で分けて食べるんだよぉ」
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村へと戻り、ジャックやジュリアと合流する。
そこでピクシーの話や、ウンディーネの話を聞く。
探していたあの石が泉にあり、その力の影響で一時的とはいえ、
ウンディーネが自我を持った事も。
石の力がどんなのだったのかはもう伺い知れないけれど、
爺様と婆様の思い出深い品だったであろう事は、間違いなさそうだ。
そういえば...私にはもうひとつの、別れがあるんだっけ。
アルト村を離れ、皆とも別れる時。
「ジャック、ジュリアちゃん。
今回は別行動で何も話せなかったけれど、
またいつか一緒に行動することがあれば、よろしくねぇ」
「チルグラちゃん、少しの間だけだったけれど、楽しかったよ。
今度のんびりと散歩でも行きたいねぇ。
その時は、秘密の家出のお話も聞けるかな?」
クスクスと笑いつつ。
そして、パムに。
「ありがとう、パム」
そういって、パムを抱き締めた。
手を繋いでくれたのが嬉しかった。
沢山話し掛けてくれたのが嬉しかった。
誰かに触れられる暖かさ。
また一つ、覚えられたよ、パム。
「またいつか...一緒に歩ける日が来るのを、楽しみにしてるよ」
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PL:3週間、あっという間でしたね、楽しかったです。
パムとの一回限りのパーティも終わってしまいました...何だか寂しいなぁ。
爺様に石を届けられなかったのは心残りではありますが、
石の在り処と、泉のウンディーネとの繋がりまでは突き止められて一安心。
ごめんね、爺様。 ペンダント渡したら気付いちゃうのは予想してたけど、
渡す事を拒む理由も見つからなかったの。
皆様ありがとうございました、またいつかご一緒した時は宜しくお願いします。
経験点400点の受領と、クッキー1袋、マシュマロ1袋を消費します。