ようやく力が戻り、立ち上がる。
細かな傷はたくさん受けたが、大きな問題ではない。
「ガラフ、ありがとう。
あんたが守ってくれたおかげで、私もルーシィも助かった」
戦友に礼を述べる。
そこへ、礼拝堂からカーツとジェノが戻ってきた。
「カーツ! ジェノ! あんた達も無事で良かった!」
>「二人とも、よく頑張ってくれた...ありがとう」
「あんた達こそ、よく頑張ったよ。間に合ってよかった」
ジェノとカーツをねぎらった。
我々を襲ったフェザーフォルク達の体が、さらさらと崩れていく。
周囲に満ちる声は、
さきほどの狂ったヒューリーの声では無い。
心が洗われるような、ありがとうの声、声、声――
これが、彼らの望んだ"開放"なんだな...。
しかし気になる――地鳴りが収まらぬな...。
> """ありがとう"""
「ルーシィ...!」
目の前の彼女は狂気から解き放たれ、あの笑顔が戻っていた。
涙にぬれる彼女は神々しさすら感じるものだった。
>「これを」
差し出したのは、あの短刀。
私を傷つけ続けたそれは、繊細な細工の施された美しいものだった。
>「私から差し上げられる、あなた方が価値を見いだせるであろう物は、これくらいです。」
「...義理堅いんだな、あんた...」
面映いような、くすぐったいような、そんな微笑。
彼女の身体は崩れ続ける。だけど、悲壮感はない。
これで、良かったのだ。
>「ヒューリーに取り憑かれたままでしたら、このまま彷徨う存在になり果てていたやもしれません。
> ありがとうございました」
「私も、あんたを狂ったまま楽にするには、忍びなかったんだ。
頑張った甲斐が、あったな」
翼を広げるルーシィはそのまま天へ昇り。
光を抱いて、さらさらと消えた。
>「・・・・・ジュリアンさんに、会えたんだね」
>「あぁ......後であの森に寄って見よう」
「そうだな...」
カーツとジェノの言葉に、静かに頷き、
受け取った短刀の柄を、そっと握り締めた。
しかし、いつまで経っても地鳴りは止まらない。
巨人のせいではないのでは...と思い出した時
>「川を下るのです」
>「お早く」
いつの間にか現れた、二人のフェザーフォルクの少年。
>「同胞を、母を、父を、解き放っていただき、感謝の言葉もありません」
>「川を下り、滝を抜けると番人の巨人がおります」
>「彼は誠実な巨人です。
> 人の街に帰るのに手を貸してくれるでしょう」
そういう間にも、水が溢れ出した。
「感傷に浸る間もないのか!」
毒づきながら、走るしかなかった。
振り向くと、『楽園』は――偽りの聖母が創りだした無慈悲な実験室が沈んでいく。
そこであった悲劇も、嘆きも、苦しみも、何もかもを呑み込んで。
「ああ、それでいいんだ!」
全てのものは、死に至る。
壊れぬものはない。
変わらぬものはない。
だけど嘆く必要なんてない。
それが、彼らの望んだ『真実』ってやつだから。
魔法で歪められた偽りの楽園は、本当の墓所となって、
清らかな湖の下で眠るんだ。
私は歌おう。
この物語の顛末を。
彼らの嘆きを、心を忘れぬために。
それが、詩人の務めなのだから。
「しかし、巻き込まれるのはごめんだ!」
飛び込め、と指示された川は――
「滝じゃねえかああああああ――――!」
ざっばーーーーーーーん!
フェザーフォルクの少年が、尽力してくれたことには感謝する。
にしても、非力すぎたな――。
水をしこたま飲みつつも、もがきながらようように水面へと顔を出す。
「ガラフ!ガラフを――!」
金属鎧のドワーフを助けなければ!
水中へと手を伸ばそうとした瞬間、思いも寄らぬ巨大な手が水中に伸び
そのままガラフを掬い上げた。
口をあんぐりあげたまま見やると、複数の手を持つ巨人。
「あれは――」
味方だと知らされてなければ、パニックに陥るところだった。
そして見つける、仲間達の顔。
「パム! ジェノも無事で良かった!」
手を振り、セリトを探して頭を巡らせて。
「あーはいはい、心配して損したな」
リーダーとカーツに、はははっと声を上げて笑いかけた。
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一気に書いた!
短刀謹んで拝領いたします。
希望する方に差し上げてもよいのよ